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2016年9月26日 (月)

「すき・やき」楊逸

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日本に来てほぼ2年になる中国人の梅虹智(ばいこうち)は大学生。

姉の紹介で高級すきやき店でアルバイトを始めます。

日本語、習慣、店のユニフォームである着物、慣れないことばかりです。

店でいろんな客と接し、店長に憧れたり、学校では韓国人の留学生に言い寄られたりする毎日・・・・。

なんともほのぼのとした小説です。

店ではココちゃんと呼ばれ、いろんなことで戸惑う様子が可愛らしくユーモラスに描かれています。

中国人から見た日本文化の観察でもありますね。

日本料理を代表する(?)すきやきの店で着物を着て働き、個室で食事する客たちをもてなす。

ベタな設定ではありますがストレートでわかりやすい。

「だからなに?」とも思いますが、ま、あまり深読みするような作品ではないのでしょう。

作者の作品を読むのはこれで3冊目になりますが、過去に読んだ作品と違い重い主張もなく肩の力が抜けた感じでほっこりと楽しめました。

2016年9月24日 (土)

「こんな書店で本を買いたい 書店の秘密」池田良孝

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本好きにとって書店というのはとても楽しい場所です。

私の地元にも昔は何軒も本屋さんがあり、よくはしごしたものでした。

お目当ての本を探すという目的の場合もあれば、特に理由もなくただ本屋さんに入るのが楽しいというだけのことだったり。

でも今の都会のオープンな大型書店とくらべると閉鎖的ではありました。

どこも個人商店なのでたいがいオッチャンオバチャンが入口のレジにいるんですね。

なので頻繁に出入りできるという雰囲気ではなかったですし、店に入って手ぶらで出るのがちょっと気まずかったりもして。

でも店それぞれの雰囲気というのが明確にあり、それが味わいでもありました。

さて、この本ではまず第1部で客はどんな書店が魅力的で買いやすいか、いろんな店を紹介しつつ検証しています。

そして第2部では多くの書店を取材し、現場ではいろいろと工夫をこらしているということを紹介しています。

といっても2つの章の内容に大きく違いがあるわけではありませんが。

本が売れなくなっているといわれる昨今、小さな個人店はつぶれ、大型書店といえども閉店を余儀なくされたりしています。

購入の仕方もネット販売や電子書籍といった新たなジャンルの登場で、本屋に足を運ぶ必要もなくなってきています。

しかし本当の本好きなら実際に書店へ足を運び、本に囲まれた雰囲気を味わい、現物を手にし、購入したいと思うはずなのですが。

いや、そう考えるのは本だけが好きなのではなく、書店という場所が好きなんでしょうね。

そんな人が少なくなってきたということでしょうか。

ネットでも本は買えますし読むこともできます。

でもいろんな本に囲まれて眺めつつ、手に取る喜びは味わえません。

私はやはり書店で紙ベースの本を買って読みたいですね。

2016年9月22日 (木)

「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」三上延

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ビブリア古書堂に電話がかかってきます。

大輔が出ると相手は栞子の母、篠川智恵子でした。

10年間連絡も無くなにをやっていたのか。

大輔は問いますが簡単なやりとりで電話はプツリと切れます。

電話は店の目の前にある北鎌倉駅のホームからかけてきたようです。

翌日、ビブリア古書堂に智恵子に用事があると女性が訪れ、『特別な相談』があるといいます。

もちろん智恵子はいないので栞子が対応します。

内容は江戸川乱歩の古書についてだとのこと。

大正か昭和の初期に建てられた洋風の別荘といった趣の依頼者の家を訪ねると、そこには膨大な江戸川乱歩のコレクションがありました。

そのコレクションを譲る代わりに金庫を開けて欲しいと依頼されます。

金庫の中には何が、そして開けるための鍵は。

どうやらこの依頼には篠川智恵子も関わっているようなのですが・・・・。

シリーズ第4弾は江戸川乱歩を取り上げた長編です。

それに合わせてかミステリーらしく暗号の謎解きがあったりします。

個人的にはこういうのには興味ないんですけどね。(笑)

今回は栞子の母、智恵子が現れたことが新たな展開といえましょうか。

そして大輔がなんと栞子にデートを申し込み、栞子はそれを受けます。

デートで大輔は・・・・。

2人の仲もじわじわと進んでいます。

これもまたこの作品の読みどころ。

なにより実在の作家や作品が出てくるのがいちばんの魅力ですが。

2016年9月20日 (火)

「ナンシー関の顔面手帖」ナンシー関

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ナンシー関。

消しゴム版画家でありコラムニスト。

消しゴムで似顔絵を彫るだけでも特異な才能なのに、鋭い観察で芸能人たちを切りまくったコラムがまた絶品。

天は二物を与えるものなんですねぇ。

一物さえ無い人も大勢いるのに。(笑)

この本は著者最初の単行本を文庫化したものです。

コラム69本、版画101点。

それぞれのコラムに版画が添えられているわけですが、まず版画だけで笑えます。

一発芸の破壊力があります。

そしてその人物の言動を分析した切れ味の鋭い文章でいかにもと頷いてしまうんですよねぇ。

いやほんと面白くて痛快です。

そんな稀有な才能も2002年に39歳の若さで急逝してしまいました。

今でも芸能界や社会のいろんな話題を見聞するたびに「ナンシーが生きていたらどのように批評しただろう」なんて思ってしまいます。

もう新作は読めません。

未読既読に関わらず、残された作品集を順に楽しんでいきたいと思います。

2016年9月18日 (日)

「奥薗壽子の ほのぼのほどほど 「家庭料理の底力」」奥薗壽子

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ナマクラ流ズボラ派家庭料理研究家。

著者の肩書きだそうです。

ラクして楽しく美味しい料理を作りましょうということなんですね。

たしかに毎日料理する主婦にとってはそうそう手間をかけていられませんし。

でもこの著者の料理はインスタントを使ったりしないんですよね。

だしの素とか。

ニンニクやしょうがもチューブを使ったりしません。

そして科学的根拠の無いことはやらなくていいと言います。

特に理由も無いのに昔からこのようにやってきたからというだけのことが料理には結構あると。

そんなプロセスは省いてラクしましょうということです。

手を抜いていいところといけないところの見極め。

それがツボであると。

この本では著者の家庭での食生活を書いたエッセイと、31の簡単レシピが紹介されています。

私もけっこうこの著者のレシピは参考にさせてもらってます。(笑)

2016年9月16日 (金)

「スコーレ No.4」宮下奈都

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田舎だと言われたらちょっとむっとするけれど、都会かと言われれば自ら否定しそうな、物腰のやわらかな町に住む津川麻子は中学生。

家は古道具屋を営んでおり、祖母と両親、ひとつ下で小学生の七葉、6つ下の紗英と暮らしています。

そんな麻子の成長を描いた4つの物語です。

スコーレというのはスクールの語源となったギリシャ語だとか。

No.1では中学校、No.2では高校、No.3では大学と就職して派遣された高級靴店、No.4では本社での勤務が描かれています。

平凡な自分と違って器量のいい七葉、学校の友人たち、職場の人たち、恋人。

いろんな場所で、いろんな人たちとの出会いの中で、少女から大人へ。

一人の女性の丁寧な成長物語です。

全編麻子の1人称で書かれているのですが、No.1の中学校時代はやはりちょっと違和感を持ちました。

子供の視線での1人称というのはどうしても無理があると私は思っています。

小学生や中学生がそんな言い回しや物の考え方をするわけないだろと。

なので就職してからのNo.3とNo.4がよかったですね。

語学を生かして輸入貿易会社に就職したものの、現場研修と称して靴屋の販売員に。

なぜ自分はこんなところにぼうっと立っているのだろうと疑問を持ちます。

ですがそれなりにやりがいを見つけ、職場を変えていったりもします。

3年後にようやく本社に戻りイタリアへ靴の買い付けに。

このあたりは真面目で不器用っぽいながらも生き生きとした描写で、麻子という人物の魅力が伝わりました。

全体的に地味ではありますが、爽やかで味わいのある小説だと思います。

2016年9月14日 (水)

「パリジャンは味オンチ」ミツコ・ザハー

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パリに住んで40年の著者がパリジャンやパリジェンヌの本当の姿を書きます。

ケチで意地悪でわがままなパリジャンたち。

しかし憎めないのだと著者は言います。

そして美食の街で知られるはずのパリっ子たちは実は味オンチだった・・・・!?

世界中から憧れを持って観光客が訪れる花の都パリ。

ですが外から見るのと地元民として中から見るのとは大違い。

ま、これはどこでも一緒でしょうけど。

グルメについてですが、たしかに最高級のレストランの料理はまさに美食の極みでしょう。

しかし庶民の普段の食事といえば美食とは程遠く、思いのほか質素です。

日本人の普段の食事のほうがよほどごちそうです。

フランスには「ミシュラン」と並ぶレストランガイドブックで「ゴー&ミヨ」というのがありますが、その創始者であるアンリ・ゴー氏と食べ歩きの取材をしたときのことが書かれています。

鮨には驚くほどの醤油とわさびの量だし、焼き鳥のタレをごはんにかけるし・・・・とまるっきりの和食ビギナー外人だったとか。

しかも鮨好きの氏にフレッシュな本わさびと鮫皮のおろし板をプレゼントしたところ、わさびは本わさびよりもチューブ入りのほうが好きだと言ってのけたとか。

とほほ・・・・。

そういえば何年も前にテレビであるパリの3ツ星シェフを特集した番組で、料理にチューブわさびを使っているのを観たことがあります。

えっ、と思いましたけどね。

この本は特にグルメの話題に限っているわけではなく、パリジャンのあんな話こんな話を楽しく書いておられます。

もちろんそのまなざしに愛情が満ちていることはいうまでもありません。

2016年9月12日 (月)

「まぐろ土佐船」斎藤健次

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フリーのライターをしていた著者がある日新聞にマグロ船の記事を見つけます。

仕事に行き詰まり不健康な生活をしていた著者はその世界を体験したいという強い好奇心に駆られ、マグロ船に乗ることを決意します。

高知に渡り船員斡旋所を訪ねたものの、経験も船員手帳も無い人間をまともに相手してくれません。

しかしスナックのバーテンとして住み込みで働き、漁師や地元の人たちに溶け込んで意志を理解してもらい、ようやく認めてもらうことになります。

いざ航海へ・・・・。

いやぁ、なんとも過酷な世界ですね。

もちろん仕事は厳しい。

暴風雨もあります。

まさに死と隣り合わせです。

怪我や病気になってもほいほいと病院に行くわけにはいきません。

著者が乗った船でも怪我人が出、病人が出ています。

他の船では死者も出ています。

私なんかはまず100%無理ですね。

10分でダウンでしょう。(笑)

周りは何も無い海の上です。

何年も日本に戻れませんし、気が狂ってしまうかもしれません。

実際ノイローゼになる人もいるようです。

人間関係も濃密であり複雑です。

著者は3度航海されたそうですが、2度目からはコック長としての乗船です。

なので料理についても触れられているのですが、食事は閉ざされた船の中での貴重な楽しみですね。

このあたりは以前に読んだ「面白南極料理人」に共通したものを感じます。

まぐろにマヨネーズなんて食べ方もさっそく真似してみました。(笑)

1770日もの男たちの壮絶なマグロ漁を描いたこの作品、一般人には知られざる世界を読ませてくれる貴重なノンフィクションです。

2016年9月10日 (土)

「相剋の森」熊谷達也

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クマを狩る猟師マタギの親睦会を取材で訪れた編集者の美佐子。

会場で「今の時代、どうしてクマを食べる必要があるのか」とぶち上げます。

雰囲気の悪くなった会場を出た美佐子は、ロビーで吉本というカメラマンに声をかけられます。

そこで吉本が言った「山は半分殺してちょうどいい」という言葉が頭を離れません。

なぜ人間は動物を殺すのか。

マタギは自分たちが生きていくために果たしてクマを狩る必要があるのか。

山を殺すとはどういう意味なのか。

美佐子は彼らの懐に入り込んで取材を始めます・・・・。

「森」シリーズ3部作の第1弾です。

といっても3作に繋がりはありません。

むしろこの「相剋の森」は吉本が主人公だった「ウエンカムイの爪」の続編といえます。

最近は動物愛護が相当うるさく言われています。

もちろん動物の命は大切であり、人間の身勝手でそれを奪っていいわけはありません。

マタギに対しても当然その考えはぶつけられます。

しかし昔からそのような暮らしをしてきた人たちはいまだいるわけです。

クジラやイルカにしてもそれらを捕獲し、食料としてきた文化があります。

単純に第三者がしゃしゃり出て反対を唱え批判できるほど浅い問題ではないでしょう。

都会の理屈と自然の理屈は違いますしね。

ただどこかで折り合いはつけなければならず、この作品にもそういう問い掛けがあります。

シリーズ2作目の「邂逅の森」ほど緊迫感あるシーンはありませんが、しかし大自然を相手に生きる人間を描き、読み応えのある作品となっています。

2016年9月 8日 (木)

「松田聖子と中森明菜」中川右介

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現在は昔のように歌番組もなくなり、それに連れてアイドル歌手という存在も廃れてきました。

今はソロではなくグループが人気あるようですね。

さて、松田聖子と中森明菜。

1980年代を風靡したアイドル歌手です。

1970年代に山口百恵というスターがおり、80年に引退。

それと入れ替わるように登場してきたのが80年デビューの松田聖子です。

そしてやや遅れて82年にデビューしたのが中森明菜。

この年は『82年組』と呼ばれるアイドルが多くデビューしています。

松本伊代(デビューは81年)、小泉今日子、三田寛子、堀ちえみ、早見優、石川秀美など。

松田聖子と中森明菜、この2人は非常に対照的でした。

いかにもアイドルじみた演出で“ぶりっ子”とまで言われた松田聖子に対して、素のままで不本意ながらも“ツッパリ”のイメージを持たれた中森明菜。

この本では相反する2人が80年代という時代をどのように駆け抜けたのか、売り出すための業界の戦略や思惑、本人の思想も分析しながら活動の軌跡を検証しています。

松田聖子は昔のようにヒット曲を出すことはなくなりましたが、しかしいまだに一線で活躍していますね。

歌唱力も抜群ですし、紅白では大トリも務めました。

そしてその生き様はスキャンダルなどものともせず、多くの女性たちにも影響を与え、いまや女王としての風格さえあります。

いっぽう中森明菜、アイドル歌手としての活動だけではなくその生き様も対照的です。

自殺未遂がありました。

その後は精神的にも体調的にも上向きではないようで、表舞台からは姿を消しました。

2014年には紅白に出場し数年ぶりに歌手活動を再開したそうですが、その姿はかなり痛々しかったようですね。

2人の活動を傍から見ていれば“明暗”という言葉が浮かんでしまいます。

80年代というアイドル歌手にとっての黄金時代をくぐり抜け、新たな魅力を見せ続ける松田聖子。

袋小路に迷い込んでしまった中森明菜といったところでしょうか。